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雇い止め危機を恐れる非正規、まずは窓口へ相談を

WEZZY 2020/04/16

 新型コロナウィルスの感染拡大を抑えるため、世界各国が不要不急の外出を避けるなど今まで通りの生活を続けるわけにはいかない状況だ。経済悪化は止むを得ず、すでに解雇や雇い止めも発生している。厚生労働省は31日、新型コロナウイルスによる業績悪化などで解雇や雇い止めに遭う労働者が1021人に上ることを明らかにした。

 家賃や光熱費の支払い、納税やローン返済に追われる自営業者や、時給制で働く非正規労働者の多くは、目の前の生活不安で追い詰められている。労働組合の中央組織・連合には、すでに雇い止めに関する問い合わせが相次いでいるという。

 さらに今年4月から正規労働者と非正規労働者の格差を解消するための制度「同一労働同一賃金」がスタートする。コロナショックに乗じて、無期雇用になった非正規労働者を雇い止めする企業が出てもおかしくない。そもそも企業側の体力がもたず、雇用を継続できなくなる可能性もあるのだ。

 非正規労働者は現在どのような困難に陥っているのか。コロナショックを理由に雇い止めに遭った場合、非正規労働者はどのように対応すれば良いのか。ものづくり産業労働組合「JAM」で、個人でも入れる全ての働く労働者の為の労働組合「JAMゼネラルユニオン」の藤岡小百合氏に話を伺った。

経営不振を理由に有期雇用の転換を強制される

 JAMには労働者から様々な相談が寄せられており、現在は新型コロナウイルスの問題により休業を余儀なくされた非正規の組合員の声が集まっているという。

藤岡氏「一例として、あるスポーツジムの従業員から『子供の休校によりシフトを抜けなくてはならなくなった。会社からは『有休扱いにするから休んで大丈夫だよ』と言われたが、本当に大丈夫か』といった相談が寄せられました。学校行事や非常事態などに備えて有給休暇を温存しておきたい従業員は、有給消化をためらいます。一般的に見ればこのスポーツジムの対応は不適切ではないのですが、そもそも子供の休校に伴うシフト変更は従業員の自己都合とは言えないので、ジム側が配慮する必要があるでしょう」

 今、不要不急の外出を控える日々を「いつまで」と区切ることが出来ないのが辛いところだ。フェーズは刻々と移り変わっており、休校もいつまで長引くかわからない。すでに、新型コロナウィルスの影響による経営悪化を理由に、雇用状況の転換を要求された非正規労働者もいるようだ。

藤岡氏「これはある医療業界の企業に務めている人から寄せられた話ですが、新型コロナウィルスの影響で売り上げが減少したため、給与の遅延が発生しているそうです。無期雇用で働いていた従業員に有期雇用への転換を強制する事態も起きています。ただ、詳しく話を聞くと、その企業は新型コロナウィルスが問題になる前から経営状況が芳しくなく、人件費削減のためにワンオペ勤務を強いるなど、経営の維持に苦労していました。このようにもともと体力のない企業にとって、新型コロナウイルスの影響は非常に大きいです」

 無期雇用の従業員に有期雇用への転換を強いることは違法行為になる。しかし非常事態であることは事実であり、有期雇用となった場合でも従業員側は泣き寝入りせざるをえないのだろうか。

藤岡氏「合意なき有期雇用への転換はそもそも違法行為です。実はこのような相談が増えてきていますが、一度合意してしまうと、撤回は難しくなります。このような被害にあわないためにも、おかしいと思ったら合意の前に労働組合に相談をしていただければと思います」

新型コロナウィルスと同一労働同一賃金は別に考えるべき

 他方で同一労働同一賃金について、この施策の本来の目的が周知されていないことに懸念があるという。

藤岡氏「同一労働同一賃金は、正規労働者と非正規労働者格差是正を目的としている……というイメージがあります。ただ、それだけではありません。労働者の4割を占める非正規労働者の給与が低い状況であるため、同一労働同一賃金にすることで“非正規労働者の待遇を改善して景気を盛り上げよう”という経済政策的な狙いが強くあります。しかし政府が同一労働同一賃金に関する説明をしっかりしていないため、『格差是正の制度』という認識が独り歩きしてしまったような印象があります」

 この認識が広まってしまうことを危惧する。

藤岡氏「“格差是正”が強調されすぎてしまうと、正社員の賃金を下げて非正規に合わせ、格差を改善したかのように見せる企業が出てくる恐れがあります。これは本末転倒であり、従業員間の軋轢を生んでしまいます。日本の非正規の賃金は正規の6割ほどですが、欧州では8割から9割の水準です。日本も欧州並みの水準に引き上げ、非正規の待遇を改善していく必要があります」

 新型コロナウィルスの感染拡大を食い止めるため、リモートワークを推奨する企業は増加している。期せずして「働き方改革」が進んだという印象もあるかもしれないが、しかし景気がこのまま悪化すれば「働き方改革」どころではなくなってしまう。

藤岡氏「大企業を中心に同一労働同一賃金の対策をこれまで進めてきましたが、新型コロナウィルスのためにそれどころではなくなっています。大企業の動きを見て対策を検討していた中小企業は少なくないので、ますます同一労働同一賃金への対応が遅くなっていきます。企業の規模に関係なく、『同一労働同一賃金に対応できなくても仕方ない』という開き直りにつながる危険性が想定されています」

 だが従業員側にとっても死活問題であり、そのような開き直りを受け入れるわけにはいかない。雇い止めを始めとした不利益を被る可能性に戦々恐々としている非正規労働者は多くいる。非正規労働者はどのような対策が求められるのか。

藤岡氏「この件でも政府はまだコメントを出しておらず、従業員側は遠慮する必要はありません。新型コロナウィルスと同一労働同一賃金は別問題で考えて良いのです。

 もちろん自分だけで考えるのではなく、少しでも『これって問題じゃないのかな?』と悩みがあったら労働組合を始めとした様々な機関を利用してほしいです。最近は様々な窓口が増え、メールや電話など相談の受け方も多様化しています。一人で悩まずにまずは一度、声をかけてほしいです」

 

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