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コロナ禍で雇止めや給与減額を迫られる外国人労働者 一方的にクビになるケースも【WEZZY】

コロナ禍で雇止めや給与減額を迫られる外国人労働者 一方的にクビになるケースも

文=宮西瀬名
2020.08.03 08:00
 

 新型コロナウィルスの影響により、様々な労働者が窮地に立たされている。非正規かつ外国人の労働者の状況は特に深刻である。

 個人でも入れる全ての働く労働者のための労働組合「JAMゼネラルユニオン」のもとには様々な相談が寄せられているという。同組合の藤岡小百合氏に、現状を聞いた。

コロナ禍で雇止めや給与減額を迫られる外国人労働者 一方的にクビになるケースもの画像2

藤岡小百合
大学卒業後は青年海外協力隊としてソロモン諸島キルギス共和国に派遣。帰国後「ものづくり産業労働組合 JAM」に入局。現在、組織化推進局(JAMゼネラルユニオン)担当。

 

コミュニケーション能力の不足を理由に一方的な解雇

 実際に外国人労働者から寄せられた相談内容を、具体的に伺った。

藤岡氏「国内の外国人向けに販路拡大を模索するために照明器具の製造を行う中小企業に、技人国ビザで入国したフィリピン人のLさんとJさんから相談が寄せられました。

 契約書に記された業務内容は、翻訳、外国人マーケティング、国内販路拡大などとされていましたが、実際は機械を使った資材の切り出し、薬品の混合、20㎏にもなる資材の運搬といった単純作業の繰り返しばかり。人手不足を補うために、体よく外国人労働者を採用した典型例です。

 そして、コロナ禍により急速に業績が悪化して今度は人余りになったため、2人は本年3月に会社から具体的な内容はなく、『コミュニケーション能力・日本語能力の欠如、業務が遂行できない』と記された“解雇通告”を出されました。

 次に、中国人のTさんとHさんのケースです。彼らは中国の大学を卒業後に日本の国立大学院に進学しマーケティングを専攻し、一旦は中国に帰国して就職したのですが、再度日本で挑戦するために“技人国ビザ”を取得し、2019年8月に中国進出を検討している女性ファッションブランドS社(社員150名)に採用されました。

 しかし新型コロナウィルスの完成拡大に伴い、中国進出の見通しが立たなくなり、やる気を失わせて自主退職に追い込むため、6月末に国内営業部門に異動させられ、職種変更による大幅な賃下げを命じられました。

 また、転職のためのインターネット・メディアを運営する会社は、2019年初頭より新規事業として企業向けクラウド・アプリケーションの開発事業を始め、優秀な外国人のエンジニアを多く採用していました。しかしコロナ禍により自社株が暴落したため、今年4月に突然この開発事業を止め、16名の整理解雇を発表しました。

 その後、解雇された6人が労働組合を結成し、解雇撤回に向けて団体交渉を行ったのですが、『あなたは日本語が上手ではないから』と言われ、会社は“整理解雇の四要件”を満たしていると主張しました。ですが、彼らは入社当初から、『当社は語学力よりも技術力が優先されますし、英語が社内公用語となりますので心配いりません』と言われており、『日本語が上手ではないから』という弁明は当然納得いくものではありません。

 なにより、この会社のバランスシートを見る限り、整理解雇に踏み切るまでの体力がないわけではなく、経営者の報酬カットや希望退職者の募集など、やれることはまだまだあります。他にも不採算部門はあって閉鎖となりましたが、日本人は別の部門に異動となり、明らかに外国人差別のクビ切りと言えます。

 技人国ビザの外国人の場合、6カ月以内に再就職しないと日本から出ていかなければならず、法律的な争いが少ないために外国人が選ばれたものと想定されます。こちらは弁護士と相談中で、訴訟を起こす予定です」

やむなしの条件引き下げは同意できない

 6月のロイター企業の調査では、新型コロナウイルス感染の影響により、調査企業の半数超で賃金・雇用の削減などを実施したことがわかった。理不尽な解雇ならともかく、「未曾有の事態なので給与減額は仕方ない」という見方もできるそうだが、藤岡氏は「『経営が悪化しているから給与を下げる』という安易な論法には同調できません」と憤る。

藤岡氏「労働者の条件を引き下げるには労働者の同意が必要になり、経営が悪化していると言うなら、その根拠となるバランスシートを労働者に見せて協力を求めるべきです。ただ、内部留保を多く抱えながらも経営陣の報酬カットもせず、こういった手順を一切踏まずに労働者に給与カットを迫る企業は少なくありません。経営が悪化したとしても、再建するには労働者の協力が必要であり、労働者のモチベーションが低下したままでは、負のスパイラルに陥っていくことは自明の理なのです」

 むしろ日本の企業側が、外国人労働者に対するコミュニケーション面での工夫をすべきなのだ。

藤岡氏「同じ職場で働く以上、外国人はよそ者ではなく同じ仲間であるということを忘れないことです。もちろん特別扱いする必要はありませんが配慮は必要です。例えば、JAMゼネラルユニオンが支援しているブータン労働組合(ILUB)の組合員が働く会社では、機械のボタンに英語と日本語で説明を取り付けていました。日本語が堪能でない場合でも、ゆっくり、単語を区切って話せば理解できることも多いです。

 最後に、私が必要だと思うことは、『母国語でしゃべれるから』などという理由から、外国人だけで孤立させないことです。これでは日本語も上達しなければ、日本の習慣・常識についても理解を深めることはできません。企業側は『長く日本にいるからわかっているはず』、外国人労働者側は『注意されないから間違っていない』とお互いに勘違いしたままのケースは珍しくないです。多文化共生が進む中、少数派を孤立させない、孤独にさせないことが重要だと思います」

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