
退職代行業者は必要ない、会社を辞めるための分かりやすい手続き
「退職代行業者」がまた注目を集めている。会社を辞めたいが引き止められる、あるいは妨害されて転職ができないなどのトラブルを避けるため、本人に代わって会社に退職の連絡をしてくれる業者だ。
以前、エン・ジャパン株式会社が20代~40代の女性を対象に実施した調査によると、退職時に経験した苦労やトラブルについて聞くと、「会社・上司からの引き止め」(36%)が最多だった。退職代行業者に一定のニーズがあるのも頷ける。
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2018/12364.html
しかし退職代行業者に依頼すれば平和に仕事を辞めることができるのかといえば、そうではない。以前、「無料労働相談ステーション」を運営する筆者の“告発”が大きな注目を集めた。
https://twitter.com/funkykong555/status/1178561832388136961
<埼玉で退職代行業者のトラブルが続いている。成功率100%と言って29000円をとるのに、会社が「退職を認めない」と言い張ると依頼者には知らぬ存ぜぬを決め込むらしい。最後には「連合の無料労働相談ダイヤルに相談して!」と言われるらしい。退職代行は非弁行為だから無理なんだよ!>
「成功率100%」を謳っているにもかかわらず、失敗しても責任を取らない。これでは何のための退職代行業者かわからない。退職代行業者に関するトラブルについてまとめた。
退職代行業者は弁護士ではないため何もできない
筆者の元には日々、労働にまつわるさまざまな相談が寄せられる。その中に、「退職代行業者を利用したのに離職できず、会社側から嫌がらせを受けるようになった」というものもある。退職代行サービス業者の申し入れを会社側が受け入れず、当該社員に給与を支払わない、離職票や健康保険の資格喪失証明書類などを送らない、という嫌がらせに出るのだ。
退職を認めない会社側は、「本人が直接社長に退職届を提出することになっている」「仕事の引継ぎをしないと認めない」「労働者が損害を発生させたからその弁償問題を決着させろ」といった主張をすることが多い。これらの主張は会社側の無茶苦茶な言いがかりなのだが、会社側にこういったことを言われると退職代行業者はなす術がないのだ。
退職代行業者は弁護士ではないからだ。退職を認めない会社と交渉をすると、弁護士法72条「非弁活動」(弁護士以外の者が報酬を得る目的で法律事件を取り扱ってはならないと規定する法律)に違反してしまうのでだ。
最近では、『退職代行業者が行っているサービスは非弁活動である』として、弁護士以外の退職代行の電話を断る会社も増えてきている。退職代行業者は「依頼者に退職方法をアドバイスすること」「退職意思をそのまま会社に伝えること」くらいしかできないのだから。つまり、これ以外の交渉は依頼者本人がやらなければならないのだ。にもかかわらず、一件につき3~5万円という暴利をむさぼっているのが、退職代行業者の実態なのだ。
退職代行業者のホームページを見ると、「即日退職OK」「すべて丸投げOK」「退職成功率100%」と刺激的な言葉が並ぶ。そのため、依頼者は自分が何もしなくても退職代行業者がすべての対処をし、会社も必要書類を整えてくれるものと勘違いしてしまうが、実際にはそううまくはいかないのだ。
会社側が退職を認めないと主張し、すべてを拒否すると、退職代行はなんら打つ手がない。宙ぶらりんにされた依頼者が退職代行業者に抗議して返金を求めても、「当社はやるべきことはすべてしましたので返金はしません」「あとは労働団体の無料相談に電話を」と無責任に放逐されてしまうことは珍しくない。
退職代行業者に特別なノウハウはない
筆者は、無料のLINE労働相談を設けており、退職を認めない会社に関する相談を受けつけている。
長時間残業を強いられ、パワハラ・セクハラを受け、精神疾患寸前の状況に追い込まれている人からの相談もある。退職を申し出ても「損害賠償を請求するぞ」と脅されるなど、困り果てている人もいる。そういったケースは引き継ぎ云々の次元ではないため、できるだけ早く退職できるようサポートしている。これは労働組合だけではなく、相談ダイヤルを設定している労働組合はどこでも同じアドバイスをしているはずである。労働情報センターなどの行政機関でも同様である。
退職代行業者がしている「依頼者に退職方法をアドバイスすること」は、特別なノウハウでもなんでもない。退職は正当な手続きを踏めば100%できるし、簡単なことなのだ。
退職手続きの正式な手順・トラブル時の対処法
退職の正当な手続きとはどういうものか。その正式な手順とトラブル時の対処法をここに記す。
1.退職届を提出
1カ月前に退職を申し出ることと就業規則で定めている会社も多いが、民法627条1項において、期間の定めのない雇用契約場合は退職の2週間前までに会社に対して退職することを伝えれば良いことになっている。就業規則よりも民法が優先されるため、2週間前に退職を申し出れば退職できる。もちろんこの2週間のすべてを有給休暇にあてることもできる。
2.有給休暇取得申請書を提出
筆者は、有給休暇を完全取得したのちに退職することを勧めている。
3.残業代金の未払い分があればその請求書も提出
残業代金は5年(当面の間3年)に遡り請求できる。タイムレコーダーの記録やパソコンのログ記録など、就労していたことが分かる証拠が必要である。エクセル表などに毎日の残業時間と請求金額を計算し、根拠を添えて会社に請求する。
4.健康保険証や会社貸与器物の返却
正当な退職手続きをとったとしても嫌がらせをしてくる会社は少なくない。そのケースでの対処法もご紹介する。
・給料や退職金、残業代金を支払ってこない場合
会社が給料や退職金を支払わない場合、まずは会社に請求書を出す。こちらの指定期日までに支払わない場合は、労働基準監督署に未払いで労働基準法違反の違反を申告する。労働基準監督署はすぐに対応してくれる。
・離職票の発行手続きをしてくれない場合
会社が離職票の発行手続きをしてくれない場合は、ハローワークに相談すると良い。ハローワークから会社に指導をしてくれる。
会社がこういった書類を発行してくれない場合も、所管官庁に申し出ればすぐに対応してくれる。
どうしても自分で退職できない場合は弁護士に相談を
退職代行業者は非弁活動になることを回避するため、労働組合を設立するケースが増えてきたが、筆者はこの労働組合は認められるものではないと考える。
労働組合法2条では「労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善、その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう」と規定している。退職代行だけを行う会社からなる労働組合が、労働組合として認められるとは思えない。
会社側に立つ弁護士も同じように捉えている人が多く、退職代行会社の労働組合から団体交渉の申し入れがあっても、会社は「労働組合としては認められない」として団体交渉拒否をすることも考えられます。この場合、またもや依頼者は宙ぶらりんの状態に置かれる。
会社に団体交渉を拒否された場合、東京都労働委員会へ不当労働行為の救済申し立てをすることになる。申立書を作成するにも手間がかかり、不当労働行為の審査には長い時間がかかる。退職代行業者にそんなスキルはない。そもそも退職時にトラブルになり、退職代行の労働組合が団体交渉をしたという話は聞いたことがない。そもそも団体交渉まですると、採算が合わないのである。
筆者氏は退職行為は基本的に、退職したい人自身が自分で行うべきものと考える。それでもどうしてもそれができない状況の人がいるのも事実である。その場合は業者ではなく、退職代行を請け負っている弁護士にお願いすべきである。






















