職場トラブルよろず相談所

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労働運動は楽しい!!

                                                                                JAMゼネラルユニオン 古山 修

序 章

 筆者は、楽しく暮らし生きたいと考えている。であるから、人生において労働運動にとって必要なことは「生きる」「働く」そして「幸せ」と考えている。この三つのテーマは、自由と哲学で包まれている。
 自由とは、「勝つことだけを考えているボクサーではなかった…。ボクシングをしていることが楽しくてたまらないボクサーだった」「何故、トレーニングをするのか、それはリングで自由になるためだ…。勉強も同じだ。教室で自由に振舞うために…。トレーニングも輝きたいと思ってリングで自由になるためだ」(『春に散る』沢木耕太郎)で言い尽くされていると思う。ボクサーは、オルグに、トレーニングは、日々の勉強、リングとは労働現場である。
 哲学とは、①美しく生きるための学問であり人間らしい生き方をするためのものであり、②素晴らしく生きるための未来を探す、ものだと考えている、そして③哲学は直感を回復させなければならない。直感は対象を照らし出す。知性だけに頼ってはならない。

(1)生きるとは何なのか…
 生き方は、顔に出る。「人生顔じゃない。顔になっていくのが人生」「その顔じゃ駄目だ!」という内山興正老師(愛知県専門尼僧堂長)の「言葉」は、真理をついている。「人格もその象徴としての顔も、それまで生きてきた人生の総決算の顔であり、同時に出発点の顔でもある」「同じ一つのことも暗く受け止めると人格も顔も暗くなる。その顔で開いていく明日も暗いものとなる」そして、「どんなことも明るく幸いと受け止め、転じてゆけば、人格も顔も明るく輝き、開かれていく。明日も明るいものとなるだろう」と言っている。
 作家の壇蜜は、「転職だらけな、つぎはぎだらけの人生を送ってきた」「様々な職業を転々としてきた」「どんな経験も無駄ではなかった」と言っている。
 「若者の過ちを通過していない人間を信用しない性質なんで」と言うのは、作家の山田詠美。「バランスを崩しても体を張るという経験をしたことがない人は、いざという時に身をすぼめるだけ。力になってくれない」その通りだと思う。
 如何に一つのことに真剣に命がけで取り組むかということ。一瞬一瞬生命の火を完全に燃やし続け、緊張した生活をすること。(『お蝶夫人瀬戸内晴美
「あなたは望みの道を歩いてきたの。まっすぐではない回り道をしたけれど、それがあなたの道」(『はてしない物語ミヒャエル・エンデ
 いろんな道があっていいと思う。「人の道を間違えることも回り道をしているように見えるがそれぞれ命がけで生きる道を探しているはず」…これは真理だと思う。
 大切なのは、生きること。
 「生きていること。いま生きていること。泣けるということ。笑えるといえること。怒れるということ。自由と言えること」(『自由』谷川俊太郎

(2)働くとは何なのか…
 哲学者は、「自由、運動、閑暇、収入」(エリック・ホッファー)が必要だと言っている。そして、「楽しければ仕事はうまくいく。時間とはすなわち生活。人間の生きる生活は心の中にある。楽しいと思うと夢中になる」(『モモ』ミヒャエル・エンデ
 筆者は、「楽しく生きる」こと、同時に「楽しく働く」ことを基本としている。働く場は、遊園地(amusement park)であり、取り組みは、各種遊具(playground equipment)なので、楽しい。子供は、遊びで育つ。だから、毎朝楽しい。遊びの如く楽しみ、楽しむかの如く働き、自由な発想はうまれる。

(3)幸福とは何なのか…
 「幸福は明白な義務。他人の幸福も義務。何故なら、幸せは伝播するから」(アラン) 喜び・幸福は行動と思考と共にやってくる。そして、幸福だから笑うのではない。笑顔が幸福を作る。そして希望するとは幸福であるということ。希望は過去の挫折経験がものをいう。「幸福とは待っているときには決してこないものなのだ。」(太宰治
だから、「幸運には微笑まれる前に準備をととのえておく」(マキャベリー)であり、「偶然には準備された精神にしか微笑まない」のだ。そして、幸せと希望には、羽があってその人の魂にとまる。外国人に説明するときは、「幸福の女神があなたのところに来て笑顔を浮かべるよ。そして、あなたは、幸せになるよ」と言うと前に向くようになる。
 労働運動は、座学では生まれるものではなく頭の中の創作でも生まれないものがある。正に観念ではなく実践の中で学ぶものである。知恵は役立たず、実践的知恵こそが役立つ(『五輪書』)。「知識などはたかが道具」(黒田官兵衛)と言われている所以はそこにある。生かじりの知識では、実践によって習熟しなければならない。では、どこで学ぶかであるが成功からは学ぶものは少なく、失敗から学び成長するものである。
 体験からの思考は、大地に根を張り成長する。
「失敗が提供するのは、楽々と真っ直ぐに滑り落ちていくゆるやかな坂道。成功の道は、いばらだらけで苦労するしかない」(ハンナ・アーレント)。

 
第1章 組織戦略とオルグ


Ⅰ 組織戦略図

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Ⅱ 思考

1-1 「思考停止」は避けなければならない
 大勢に流されず、強いものにひるまず、自分で考える。思考停止とは、考えることを放棄することであり、ただ言われた通りにやるだけである。その先にあるのは、何事にも諦めるという最悪のシナリオがある。他責そして無関心となる。組織化という最高に面白いことに、引いてはならない。未組織を救済するということは労働組合に結集させる、そう、そこに群れる…ことである。

(1)再生的思考:過去に成功したとしても、明日には通用するかは分からない。
(2)戦略的思考としての生産的思考:思考することが武器
(3)組織における属人思考の誤り 
       ①思考停止 ハンナ・アーレントユダヤ系ドイツ人哲学者)
       ②自分で考えず、命令に従うのであれば組織の活力を失う(『イエルサレムのア

          イ  ヒマン』『悪の凡庸』『ゲッペルスと私』)
(4)思考という武器で武装する

1-2 思考の図式化

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 思考を習慣づけ、そして読書する。失敗・成功を繰り返す。生産的思考の中で、組織戦略は生まれる。問題に関して、個人の問題として考えてはならない。


2.情報収集・組織分析

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 (1)情報:新聞、雑誌、人脈、情報網を張り巡らす
 (2)情報の分析・調査
   ① 相手を分析・研究:弱点を分析 
 (3)読書する(情報という部品を使いこなすために必須)

3.実践
 (1)座学ではできない
 (2)戦略、判断力、創造力の何れも実践の中で作られる
 (3)指揮するには、実践的経験が不可欠である
 (4)実践なくして団体交渉も組織化もできない
 (5)上達の便法はない。実践のみ
 (6)たえず間違いを犯し限界を見せる
   (7) 賢者は歴史に学び、愚か者は経験に学ぶ。経験に教えられ、経験に圧倒され

              てはならない
 (8)100回のレッスンより1回のステージ
 (9)実践に勝る学びはない

 4.職場の核
 (1)核としての適格性を見抜く
 (2)核となる人がいなければ、組合はできない
 (3)数年の時間軸の中で核となる人を確保する
 (4)核もなく企業訪問する無駄を自覚しなければならない


第2章 組合結成

Ⅰ オルグ

1.オルグとして必要なこと
   (1)相手・仲間へのリスペクトがなければ、組織化はもちろんのこと団交もでき

              ない
 
2.オルグと実践
   (1)挑戦と失敗
    ① 失敗は勉強の材料。成功より学ぶことは多い
    ② 体を張る経験をしたことがないと、身をすぼめるだけで、力にはならない
          ③「他責」ではなく「自責」で
          ④ 失敗を恐れない…何故、結成までに至らなかったのか検証。成功しようとす

                る煩悩は捨てる
          ⑤ 挑戦することは、失敗しても価値がある。現状は、やらないことは問われず、

             挑戦した結果 の失敗がたたかれる
         ⑥ 小事も大事のごとく成し、大事も容易な小事のごとくなす:パスカル
         ⑦「失敗が提供するのは、楽々と真っ直ぐに滑り落ちていくゆるやかな坂道。成

              功の道は、いばらだらけで苦労するしかない」:ハンナ・アーレント(序

              章8)
        ⑧ 訓練・実践を繰り返し戦力となる:『春に散る』沢木耕太郎
        ⑨ 常勝は駄目:『春に散る』沢木耕太郎
        ⑩ 負の循環を何処かで断ち切る
        ⑪ 無数の敗北を越えていく
        ⑫ 無難の道は選ばない
        ⑬ 人間は挫折と絶望そして遠回りの連続 
        ⑭ 失敗の数を重ねれば成功する

  (2)基本は信頼関係

  (3)冷静な分析と戦略
       ① 雰囲気や勢い、気概だけでは出来ない
       ②「組織人間」にはならない。そして、「好奇心」「探求心」「向学心」「向

             上心」「創 造性」を持つ。何ごとにも関心を持つ。偏っていい
       ③ 実態を知らない者が机上で計画を作っても実態に合わず計画倒れとなる
       ④ 逃げ散るのではなく、共同で防衛していくという考えを目覚めさせる。相手

            は、群れを散り散りにしようとするから

  (4)下記の様な陳腐な戦術をとってはならない
   ① 小さな組合は作るな:小さな組合を作れない者は大きい組合は作れない
   ② 業種を絞り込め:何でもやる 『海賊とよばれた男
   ③ 組合の安売りはしない:1人・75円or実数の10分の1「論外の一言」

  (5)人間関係の財産を大切にする

  (6)他責、環境のせいにはしない

  (7)仕事を追いかける(与えられた仕事だけしかしない=サラリーマン根性)

  (8)運と力(運とは…自分で運ぶもの)

  (9)新しいことに挑戦する

Ⅱ.組織化ルート(人脈という武器)

 1.相談ルート図式化

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第3章 団体交渉


Ⅰ.団体交渉が出来なければ労働組合はつくれない

 1.労働組合は道具でありそれを有効に使う場こそが団体交渉
 
 2.労働組合の粘り強い交渉努力が不可欠
 (1)要求の実現につながる
 (2)相手の感情を損なうことなく明白な事実を伝える場
   (ウィンストン・チャーチル

 3.団体交渉という場
 (1)実践なくできない
 (2)「交渉力」が問われる
 (3)相手の心を動かす場であり説得力が問われる
 (4)信頼関係の構築
 (5)理念・哲学を伝える場
 (6)隠さず、誠意をもって話すと、人は聞いてくれる
 (7)雑談から入る
 (8)争い・糾弾の場ではない
 (9)分析する場であり、分析される場でもある
 (10)団体交渉の場から離れたら、相手の力量が見れなくなる
 (11)意味のない和平交渉は拒否する
 (12)結婚とは外交。駆引きと謀略に尽きる。(田辺聖子

 4.団体交渉とは
   (1)百姓一揆である。武装蜂起でも階級闘争でもなく、団体交渉に近いもので

              ある。(呉座勇一)
 (2)農民は、クワや鎌を持っただけである。
   (3)というのは、会社側(大名)は穏便な解決を、組合(農民)も団交の瞬間、

              落としどころを見つける。百姓一揆と同じである。
   (4)一揆は農民は要求が通らなければ農地を逃散する。これも闘争形態だと思う。
   (5)組合は、団結権・団交権があるので、群れて「団結」して団交で自主交渉・

              自主解決を目指す 。

Ⅱ.労働委員会


 1.労働委員会の活用
 (1)団体交渉で壁にぶつかった時労働委員会を活用していけばいい
   (2)筆者は、労働委員会を日常的に活用している。労使関係に対する組合側の

              理念・哲学がしっかりしていれば、不当労働行為が起きても、労使関係の修

              復という着地点は見えてくる。
            当該組 合・組合員を安心させ、諦めずに結束させることも、オルグの大事な

             役割である。
  (3)それぞれの事件で労組法7条の1号、2号、3号、4号のいずれか、または組み

              合わせで取り組んでいる。なかでも重要なのは、3号の支配介入。
  (4)労働者性を争うケース(ソクハイ事件)では審問に入り、労働委員会、中労

             委共に勝利した。 通常は、次の落としどころで進める。
       ① 自主交渉・自主解決
            ② 関与和解:必ず審査委員からの労使双方への要請事項を内容とした「調書

                 」を付ける


Ⅲ.労使自治の方程式


1.労使自治は、結成準備、結成大会、通告、組織拡大、団体交渉、協定書の締結…

        の延長線上にある。
2.労使自治の形成には、組合の過半数制覇であり、何よりも団体交渉での粘り強い

        交渉といえる。
3.何を争点にするか…が問われる。
4.「抑止力としての労働組合」+「不断の組合活動」+「健全な労使関係」
     =  「労使自治として構築」 する。

第4章 労組法上の労働者

1.労組法上の労働者として組織化
 (1)対象者
   ① YMSスガナミ
   ② シャルレ
   ③ ソクハイ
   ④ 東京ドイツ文化センター非常勤講師
 
 2.労組法上の労働者
(1)労組法上の労働者の法的根拠
         ① 経済的組織的従属性(労基法上の労働者は、使用従属性から定義)
         ②「労働組合法第3条」では、「労働者とは、職業の種類を問わず賃金、給

               料、その他、 これ に準ずる収入によって生活する者をいう」。
         ③「労働組合法第7条」では、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉

               をすることを 正当な理由がなく拒否してはならない」。
(2)労組法上の労働者と労基法上の労働者判断基準と相違点
    ①「労組法上の労働者」
        ア.組織に組み込まれ必要不可欠な労働力
        イ.契約が、一方的、定型的、集団的に行なわれている
        ウ.報酬の労務対償性
        エ.諾否の自由がない
        オ.時間的・場所的拘束
        カ.労務提供における指揮・監督
   ②「労基法上の労働者」
        ア.諾否の自由がない
        イ.指揮・監督
        ウ.時間的・場所的拘束
        エ.代替性がない
       オ.服務規律の適用
       カ.報酬の労務対償性
       ③ 労基法上の労働者と労組法上の労働者ノ相違点
             ア.服務規律
(3)契約の定義
    ① 委任契約(民法643条):専属性がない労務提供であり、委託された業務の処理
    ② 請負契約(民法632条):請負人が請け負った仕事を完成し報酬を与える契約
    ③ 雇用契約(民法第623条)は、専属で労務を提供する契約で、指揮監督関係も下

             で労務を提供し、その対価として報酬(給与)を取得し、労務の結果仕事を完成

             させる必要のない契約

終 章

1.時短こそが働き方改革というが、それは間違っている。時短は目的ではない。不要な仕事、会議、飲み会、パソコンばかり打つこと(要するにふり)を止めることである。 

2.壬生義士伝の中に『陶潜の詩』がある。「人生根帯(物事の土台)なく、飄々として陌上(路上)の塵の如く盛年重ねて来らず、一日再び晨成り難し、時に及んで当に勉励すべし、歳月は人を待たず」『吾輩は猫である』にも同様な文がある。

3.「少年老い易く、老人老い難し」と加藤登紀子が書いている。「見かけは十分白髪の紳士だけれど一皮むけばガキンチョ。上手に老いようなんて思わなくていい。若気の至りのままでいいよ」…とも書いている。そう、筆者は、未熟を甘受するし、それが最も生きやすいから。筆者は、強烈な運動をやっていた二十歳ころから成長は止まっている。あの時のままでいる。

4.林真理子という小説家がいる。今、日経新聞に「愉楽」という大人の小説を連載しているが、彼女の作品に「野心の進め」という本がある。その中で「野心を持て、自分のことをなめないほうがいい、気楽なライフスタイルだけを追うな、ぼろぼろになってやり抜いたという時間がなければ充足感はない」と言っている。ちなみに林真理子は40社就職試験を受けるが全て落ち、そこから這い上がり小説家となる。筆者もどん底を味わったことでは共通している。「人間の条件は未熟」であり、人が経験することは、生まれることから老いていくこと、そして母親が居るところへ行くこと、その全てが初めての経験である。中村雅俊の「ふれあい」という歌の中に「…あの人を思い出す…」という歌詞がある。彼は「あの人とは母親」と言ってたが、筆者は昔からそうであった。ちなみにこれは朝日新聞の『be』に載っていた。

5.井筒和幸の『無頼』という映画…。15歳から60歳までのあるヤクザの生い立ちから描いている。生い立ちと、生き場を失ったり、排除されたからその道に入っていったのか…。であるからヤクザは必要悪としてもあるべきなのかな…と思っている。主人公は「弱いものを守るのはヤクザしかいない…」と言っていたが、同意するが異議がある。山口組の田岡組長の娘は、小学生の時、父親の仕事について「お父さんの仕事は弱いものを守ること」と書いている。異議は何かというと、労働組合こそが弱者を守る仕事だから。
 主人公を演じるのはEXILEメンバー松本利夫である。ちなみに「EXILE」の英語の意味は「島流し」であり、「戒厳令」「自粛警察」と同様に嫌いである。(音楽グループ「EXILE」が嫌いなわけではない)。『黒い警察』というイタリア映画があるが「自粛警察」と酷似している。
 主人公は、確かバンコクに行き、自分の子供の頃とオーバーラップした、貧しい子供たちをみて、この世界から身を引くところで終わる。考えてみれば、世の中の多くが、生き場を失ったり、寄り道をしているのかな…と。そういう筆者も同じ…。
                                                                                                                                                           以上