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日本ではたらくミャンマー人労働者の訴え

日本で働くミャンマー人は年々増加し、在留者総数は3万2049人となっている(2019年12月末時点)。クーデターは彼らに何をもたらしたのか。看護師として働く女性に話を聞いた。

目前だった夢の実現がクーデターでこわされた


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レーレールィンさん

 レーレールィンさんは2013年に来日。日本で看護師資格を取得して働いている。ミャンマーでも看護師をしていたが、「最新の医療技術を学ぶためには海外に行くしかない。それでミャンマーの役に立つことをしたい。いまの国のあり方を自分の力で少しでも変えたい」と考えるようになった。
 ボランティア活動を通じて日本の大学の先生と知り合うことができ、そこから留学の道が開けた。奨学金をもらいア

ルバイトをしながら勉強をつづけ、日本の看護師資格を取得した。来日から9年。今年中にはいったん仕事を辞めてミャンマーに帰る予定だった。1年ほどかけて介護や看護を教える学校をはじめるためだ。将来的には日本とミャンマーを行き来しながら、ミャンマーの介護・看護実習生が日本の病院や施設で働きながら学べるようサポートする事業を展開したいと考えていた。
 「両国の架け橋になるような仕事がしたい。自分の夢の実現に向けて、がんばって準備してきました。6月には今の仕事を辞めてミャンマーに帰る計画も立てていた。それなのに2月1日のクーデターで、帰ることもできなくなりました。国の未来のためにがんばってきたことがすべて否定されたようで、目の前が真っ暗になりました」 

明確な態度を示さない日本政府に失望

 クーデターが起きて以降、在日ミャンマー市民協会の一員として忙しい勤務の合間をぬって外務省などへの要請行動に積極的に参加した。しかし、日本政府の対応には失望の連続だという。要請の柱のひとつは、2020年の選挙で国民に選ばれた国会議員などによって構成される「連邦議会代表委員会」(CRPH)をミャンマーの正式な国家機関として認め、クーデターを起

こした軍事政権を認めないこと。
 「むかしから日本政府とミャンマー軍には深いつながりがあります。1988年に軍がクーデターを起こしたときも、国際社会はいっせいに批判したのに、はじめに軍事政権を承認したのは日本政府でした。私たちは、そういうことをされるのが一番怖いのです」
 在日ミヤンマー市民協会は、「軍関係者の日本への受け入れの中止」「経済援助事業の停止」などの制裁を強く求めている。さらに、クーデターによってミャンマーに帰れなくなってしまった人たちのビザの延長。家族からの仕送りがもらえなくなってしまった学生の生活のサポートなども求めているが、日本政府はずっと「検討します」を繰り返すだけだ。
 日本政府が経済制裁の実行を渋る最大の理由は、「経済制裁をしたら、ミャンマーが中国との結びつきを強めてしまうから」。これに対してレーレールィンさんは「何も事実を見ていない」と反論する。
 「いまミャンマーの国民、とくに若者たちは、中国製品の不買運動を展開しています。中国人が嫌いだからではありません。中国政府が軍を支援しているからです。日本が経済制裁をすれば、軍はいままで以上に『中国寄り』になるかもしれませんが、国民は決して『中国寄り』にはなりません。日本政府はどこを見ているのですか。誰を相手にしようとしているのですか。軍ではなく国民の方を向いて、一刻も早く経済制裁を決定してほしいです」

国民の声で日本政府を動かしてほしい

 彼女が願っているのは、日本国民が声をあげて政府を動かすこと。「軍事クーデターは、中国やロシアなどいくつかの国がサポート(もしくは容認)しているからできたのだと思います。現状のままでは、その『いくつかの国』の中に日本政府も入ってしまいます。みなさんにはそういう事実を直視してほしいです。日本人が払った税金が、人殺しをしている軍のサポートのために使われていることをどう思いますか。それがおかしいと思ったら、日本の人たちも声をあげてほしい。政府に対してプレッシャーをかけてもらいたいです」

 自分自身とミャンマーの「未来」をあきらめないために、レーレールィンさんたちは軍事クーデターに反対する国際世論づくりのために懸命に訴えつづけている。