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茨城の大型家電量販社員の休日111日に 30年ぶりに労働協約拡張

凄いニュースが飛び込んできた。
粘り強く取り組んできたUAゼンセンの大金星。
茨城の大型家電量販社員の休日111日に 30年ぶりに労働協約の地域的拡張適用が決定した。
1982 年に愛知県尾西地域の染色業で旧ゼンセン同盟が締結した年間休日に関する協約が拡張適用された事例(1984 年の第2 次決定,1989 年の第3 次決定を含む)以来。
過去8件の適用があるが、厚労相名での決定は初めて。
余談ではありますが、1982年に愛知で地域的拡張適用を進めたのは、当時ゼンセン同盟愛知県支部一宮出張所長だった二宮誠さん。そう皆さんのよく知っている伝説のオルガナイザー。
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朝日デジタル 2021年9月22日 12時30分
茨城の大型家電量販社員の休日111日に 30年ぶりに労働協約拡張
 ある会社の労働組合が会社と交渉して決めた労働条件が、同じ地域の同じような会社すべてに一律で適用される――。労働協約の「地域的拡張適用」といわれる決定が22日、厚生労働省から出た。茨城県内の大型家電量販店は、正社員の年間休日数を最低でも111日にしなければならない。地域的拡張適用の決定は約30年ぶり。
 拡張適用になるのは、家電量販のヤマダ電機(現ヤマダホールディングス、群馬県高崎市)、ケーズホールディングス水戸市)、デンコードー宮城県名取市)と、3社の労組が2020年4月に結んだ労働協約。正社員の年間の所定休日数を最低111日としている。3社の労組の申し立てを受けた中央労働委員会が8月に承認。9月22日に厚労相名で決定した。
 適用先は、茨城県内にあって①大規模小売店舗立地法の対象②少なくともエアコン・冷蔵庫・洗濯機を販売③面積が一定以上ある――といった条件にあてはまる店。管理職以外の正社員が対象になる。総合スーパーやホームセンターは含まない。期間は22年4月1日から23年5月31日まで。
 労働協約は労組と会社が話し合って決めたもの。就業規則や個別の労働契約で協約の水準を下回る労働条件を定めても無効になる。対象は原則、協約を結んだ労組の組合員だが、拡張適用されるとそれ以外の労働者にも広がる。
 関係者によると、茨城県内にはすでに協約の対象になっている店が約50店あり正社員は約600人。それ以外は2社5店で正社員は約60人。茨城県全体の9割にすでに同じ協約が適用されているとして、拡張が認められた。新たな適用先には休日が年106日の会社があるという。
 厚労省によると地域的拡張適用の決定は1989年以来。過去8件あるが、厚労相名での決定は初めて。
 日本の労働組合は企業ごとに組織されることが圧倒的に多い。労組が企業の枠を超えて集まる産業別組織があっても、労働条件は企業ごとの交渉で決まる。産業ごとの交渉が一般的な欧州の労組とは対照的だ。
 労働協約の地域的拡張適用は企業の枠を超える効果をもたらす。だが、実例は少ない。特にバブル経済が崩壊してからは長い空白期間があった。
 デフレ下で激しい価格競争を繰り広げてきた家電量販業界では労働条件が悪化しているという指摘がある。111日という年間休日数は、厚生労働省調査の労働者平均116日(2019年)より低い水準だ。
 今回、拡張適用される協約はすでに茨城県内の9割で適用されている。新たな適用先は1割。効果が小さいようにみえるかも知れない。しかし、値引き競争が行き過ぎると、一部の会社の動きが引き金になって労働条件の切り下げ競争もおこりがちだ。拡張適用で労働条件をそろえることは働き手を守る効果がある。
 拡張適用の実現に今回取り組んだのは、繊維や流通、外食の労組で組織する産業別組織のUAゼンセンだった。地域的拡張適用に詳しい古川景一弁護士は「労働組合が獲得した労働条件を、組織化されていない労働者も含めて社会全体に広げることに拡張適用の意味がある」と話す。(編集委員・沢路毅彦)
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 〈労働協約の地域的拡張適用〉 会社と労働組合が話し合って決めた労働協約を地域全体に適用すること。労働組合法18条に規定がある。一定の地域で同じような労働者の大部分が同じ協約のもとで働いていることが適用の条件。労働組合か会社が申し立て、労働委員会が調査、判断する。