職場トラブルよろず相談所

JAMゼネラルユニオンが運営する無料の労働相談ダイヤルです。

聴覚障害のある働き手 悩み抱えていても、相談しづらく

私たちの活動が朝日新聞4月4日朝刊で紹介されました。
聴覚障害のある働き手 悩み抱えていても、相談しづらく」
当ユニオンは手話ができるサポーターもいますので、お気軽にご相談くださいませ。

 

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聴覚障害のある働き手 悩み抱えていても、相談しづらく

2022年3月29日 14時00分

 

マスク着用が広がり、聴覚障害のある働き手が苦労している。表情や口の動きがわかりにくくなり、意思疎通が難しくなったためだ。悩みの相談先をつくることが課題になっている。

 「かつてなく追い込まれた」

 関東地方の40代男性は2年前の春を振り返る。

 工務店で20年以上、システム構築の仕事をしてきた。音や声を聞きとりにくい障害があったが、相手の口の動きなどを組み合わせて理解してきた。しかし2020年4月、清掃に関わる仕事に配置転換され、職場環境は一変する。

 新しい仕事はオンラインで説明されたが、字幕がなかった。同僚と3人一組での飛び込み営業をしたが、筆談を求めることは難しかった。周りから声をかけてもらえず、一人で延々と掃除をしたこともあった。

 聞こえづらい分、特に集中力を求められる。疲れやすくなり、気持ちも落ち込んだ。体重は10キロ近く減った。「障害へ配慮がない」と感じたが、会社側に「使えない」と思われるのが怖くなにも相談できなかった。

 2カ月後、「元の部署に戻してほしい」と会社側に伝えたが、給与を月10万円近く減らすと告げられた。聴力障害者情報文化センター(東京)を訪れ、紹介された弁護士に相談した。個人で加入できるJAMゼネラルユニオンに入った。

 退社して移った先では、年3回の面談で上司に相談できた。オンライン会議では文字起こしがある。「情報の入り方が変わり、仕事の機会が広がった」

 一般社団法人「ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」が聴覚障害者111人から回答を得た昨年1月の調査では、8割の人がマスク着用に不便や不安を感じていた。「口の動きや表情がよく分からない」「声が半減」など不安の声が目立った。担当者は「声を出さず距離を保って意思疎通できる手話のよさが認識された」とした上で、「マスクの普及から2年たつ現在も、職場での配慮は十分ではない」と話す。

 障害者雇用促進法は、障害者の意向を十分に尊重して相談に応じるよう義務づけている。指針では、相談窓口の設置や援助者の配置などを求めている。

 自らも聴覚障害があり、この問題に詳しい松田崚弁護士は「事業主が障害者と話し合って柔軟に対応する『合理的配慮』の考え方を浸透させることが重要だ」と話す。たとえば、まったく聞こえない人と聞こえづらい人では必要な対応は異なる。手話や筆談も状況に応じたきめ細かさが求められる。だが、実態は「相談を持ちかけても拒否されてしまいがちだ」(松田弁護士)という。

 同法は、企業が合理的配慮を怠った場合の罰則規定がない。全日本ろうあ連盟は「実質的には努力義務。長時間の手話通訳を導入しても負担が重くならないよう費用を十分に助成している英国の取り組みに日本もならってはどうか」と指摘する。

 聴覚障害者の労働問題に詳しい第一生命経済研究所の水野映子・上席主任研究員は「気軽に相談できる場や支援者が少ないことも課題だ」と話す。手話通訳者が待機するハローワークもあるが、時間は限られがち。障害と労働問題の両方に通じた弁護士や労働組合は多くない。

 JAMゼネラルユニオンには、手話ができる人が参加し、筆談も交えて相談にのっている。川野英樹副委員長は「何人もの聴覚障害者が集えば、共通の課題も把握できる。働く聴覚障害者のよりどころになるような労組結成をめざしたい」と話す。

 

https://digital.asahi.com/articles/ASQ3X4FGYQ3DULFA004.html?iref=pc_ss_date_article